1982年のストラトキャスター②

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 前回の投稿で、JVとVintage Seriesは共有点が多いと書いた。あえて共有点としたのは、実際に同一パーツを使用しているからなのだが(特にJVの上位機種)、実際の姿形は似て非なるものだ。横に並べればその違いは、わかりやすい。

 私が所有している個体での比較になるが、違いを説明していこう。

 Vintage Seriesは62年モデルで、1982年製の木部に、83年製の電気系が乗っかっている。JVは1983年製の62-85だ。ともにラッカー塗装だが、質感は異なる。

 大きな違いは、最上位機種で比べると、115はセンター2ピースが基本なのに対し、Vintage Seriesはボディが3ピースであること。3ピースといえば、フェンダージャパンでいえば、中〜下位モデルの象徴ともいえる構造。だが、レオ・フェンダーが重視していたのは、ネック〜ピックアップ〜ブリッジが同一木材上に並び、弦の振動を効率的にピックアップに拾わせること。そう考えれば、実は、中心の木材をセンターにして左右に貼った3ピースは合理的その思想を体現できるのだ。その点は85も同様だ。私の所有機は塗りつぶしのカラーだが、継ぎ目から3ピースであることがうかがえる(写真では2ピースに見える85もあるので、シースルーカラーではオフセットの2ピースを使っている可能性もある)。 

 センター2ピースのボディは、シースルーのカラーであれば特に左右の木目が比較的揃った材を使っているので、見た目は美しい。実際のサウンドにどの程度影響しているのかは判断できないが、本家がわざわざ3ピースを選択したことには、音質上の利点もあると考えられないだろうか。リアル・ヴィンテージのフェンダーのソリッドギターは1ピースか、オフセンターの2ピースがある。フェンダージャパンでも、後年のエクストラッドやオーダーものでは、オフセンターの2ピースボディの楽器があるので、ぜひ弾き比べて、振動具合を確かめてみたいものだ。

 比較するとラウドに鳴るのは85だ。Vintage Seriesもネックからボディまでしっかり振動して申し分ないが、バランスが良すぎるきらいがあり、ストラトキャスターらしさで言えば85に軍配があがる。

 もうひとつ、わかりやすい見た目の差はヘッドの形状だ。オールドに忠実なのは断然フェンダージャパン。ロゴ側の張り出し具合がしっかり再現され、先端の丸い部分とのサイズバランスがよい(なぜデカールが大きいのだろう?)。Vintage Seriesのヘッドは華奢だ。ロゴ側カーブ部分の幅が狭くなっているので、横に並べると違いがよくわかる。また、ヘッド裏のエッジ処理は、フェンダージャパンが極端に丸みを帯びている。これはグレコからの流れであろう。

 どちらもネックは板目どり(85は追柾目に近い)。ネックセンターで木目が左右対象になるように使われているので、きっちりセレクトされていることがわかる。ヴィンテージ品も基本は板目のメイプルを使用しているので、ここは効率を重視しながらも、最良品を選ぶという姿勢は、両者に受けづがれている。

 ネックシェイプはUSAが圧倒的に薄く、ヘッド同様に華奢な印象を与える。一方でJVはがっちに握り込めるようなCシェイプ。ここもオールドをコピーしていることがうがかえるし、逆にUSAは当時の潮流も踏まえつつ「良い塩梅のコピー加減」で作っている。薄くても、このネックは硬く安定して響きがよく、反りしらずなので恐れ入る。そのせいか、サウンドはとてもブライトでハリがある。

 JVとVintage Series以外にも、「1982年のストラト」に興味を持った私は、他にも2本のストラトを所有している。

 単純に生鳴りだけで言えば、所有する中で善戦しているのが、82年製のフェルナンデスのRST57-50。これも3ピースボデイで、木目の揃え方は、フェンダーを超えており、ぱっと見では継ぎ目がわかないほど。フェルナンデスは自社工場をもたいないため、基本はOEMになる。座繰りを見るとトーカイとは異なるので、カワイ楽器製ではないかとにらんでいる1本だ。ただし鳴りに関しては、オプションのラッカー塗装が施された個体であることも影響しているとも考えられる。

 また、同じく82年製のトーカイST50(ラウンド貼りローズ指板)も所有しており、こちらもまた、鳴り方は定価5万円のギターとは思えないコピーの精度は、81年を境に向上していることは前述の通りだ。ポリエステルの塗装は薄い。特に82年の前期に作られたこの個体は、サドルもプレスで、全体の雰囲気は後年のもの以上にフェンダーライクと言える。だが、全体に大味で音のまとまりは弱い。

 力の入れ具合ということでは、各社ともに「フェンダージャパンの出現」=「コピー楽器から本家への転身」を大いに意識していると見て、間違いないだろう。だからこそ、1982年が、本家・コピーブランドを含むフェンダー系楽器(ベース含む)の特異点として立ち上がってくるのだ。

 両方を弾いてきた身としては、フェンダージャパンのJVが、巷間言われるように「神格化されすぎている」とは思えない。現代では望むべくもない質の木材を使い、きっちり作り込まれたJapan Vintageであることは間違いない。それに対していくら投資をするか、高騰し続けるプライスタグをどう判断するかは、人それぞれとなる。

 続いて、Vintage seriesとJV85という、まさに兄弟機と呼べるスペック(同一PU、3ピースボデイ)のサウンドの差を書いてみたい。

 

 

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